DraftSIghtで図形の重心と重さを調べる

以前、Jw-cadで重心と重さを調べましたが、DraftSightでも同様のことができます。plane.hatenablog.com

使用コマンド

DraftSightでは、AutoCadと同じコマンドを使用できます。

REGION 領域を囲むオブジェクトをリージョン オブジェクトに変換します。
MASSPROP リージョンまたは 3D ソリッドのマス プロパティを計算します。

面積・図心計算

1. [REGION]コマンドを入力後、図形を選択、右クリックでリージョンを作成。
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2. [MASSPROP]コマンドを入力後、図形を選択、右クリックで図心、面積を計算。
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零戦のプラモデルを作る

終戦の日ですね。

今日は先日制作したRei2を飛ばしてきました。
MAC90%,95%,100%のうち、90は100mほど飛んでそのまま何処かへ消えました。95はネットに引っかかり、100は視界没というやつで、空中で見失いました。一機も戻ってきませんでした。100は30秒以上飛んだと思います。

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↑ネットの餌食となったRei2 MAC95

よく飛ぶ紙飛行機が帰ってこないのと同様、零戦も1万機ほど作られたそうですが、現存して飛行できるものは数機しかないそうです。

先日、1/72の零戦のプラモデルを買いまして、今まで少しずつ制作してきました。プラモデルはガンプラを3つほど作っただけで、いわゆる戦闘機のプラモデルを作ったことがなく、塗料や筆、うすめ液、接着剤などが必要なことを知りませんでした。そのため、あれがないこれがないと言いながら色々買い出しに行って、今日ようやく完成しました。

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↑制作した零戦

プラモデル単体で1000円程ですが、制作に必要なものを合わせると2000円ほどかかりました。自分で一から色を塗ると、ヘタクソでも完成した時の喜びは大きいですね。

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↑制作に使ったもの

零戦と紙飛行機の比較

さて、紙飛行機のブログなのになぜ零戦のプラモデルを作っているのかというと、人を載せるような大きな戦闘機と、手投げできるような小さな紙飛行機の平面形を比較してみたかったからです。

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↑紙飛行機「Jettle」の平面形

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零戦の平面形

零戦主翼と尾翼の間隔が狭く、水平尾翼の面積も相対的に小さく見えます。逆に堀越二郎が僕の紙飛行機を見たら「なんて水平尾翼が大きいんだ」と言うかもしれません。

なぜこのような違いが生じるかというと、紙飛行機のような小さな飛行物は、飛行速度と代表長さが小さくなり、レイノルズ数という値が小さくなるからだそうです。この辺りの詳しい話は加藤貫一郎著「飛ぶ力学」という本に詳しく書いてありました。

レイノルズ数が小さくなると、主翼の周りの空気が剥離し失速し始める角度が小さくなるため、主翼単体では揚力が不足してしまいます。普通の翼型は揚力の作用点である空力中心が、空力平均翼弦長(MAC)の前から25%付近にあり、重心位置がこれと一致していれば、水平滑空時に機首を上げ下げするピッチ方向のモーメントはほとんど発生しません。おそらく零戦もMAC25%付近に重心が設定されているのではないでしょうか。

一方自分が制作する紙飛行機はおよそMAC80~100%に重心を設定しているので、水平滑空時には、主翼単体で見ると常に機首を上げるようなモーメントが発生してます。機首が上がると今度は水平尾翼の迎え角が大きくなり、機首を下げるようなモーメント、つまり揚力が発生します。この主翼と尾翼ダブルの揚力によって、滞空時間を伸ばそうとしているわけです。

そのため紙飛行機は水平尾翼を大きく作ります。また、重心が後ろ寄りなので水平尾翼容積を稼ぐために必然的に尾翼位置も後ろ寄りになってしまうのです。

こんな風に両者を比べてみると、色々と違いがありおもしろいです。紙飛行機は深く深く突き詰めて考えていくと果てがないです。この果てしなさが飛行機のおもしろさなのではないでしょうか。

1/72 ウォーバードコレクション No.79 三菱 零式艦上戦闘機 五ニ型 60779

1/72 ウォーバードコレクション No.79 三菱 零式艦上戦闘機 五ニ型 60779

Jw-cadで紙飛行機「Rei2」の重心と重さを調べる

前回はJw-cadで図形の重心と重さを調べました。これを応用して、新たに「Rei2」という紙飛行機を設計し、その重心位置と質量を調べてみます。

重心の計算方法

各パーツの重心位置×質量を合算した値は、全体の重心位置×質量の値と同じです。

MX = m_1x_1 + m_2x_2 + m_3x_3   (1)

Mは全質量[g]、Xは全体の重心位置までの距離[cm]、m1~m3は各パーツの質量[g]、x1~x3は各パーツの重心位置までの距離[cm]を表しています。
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(1)式を変形すれば、重心位置X[cm]が計算できます。

X = \Large\frac{m_1x_1 + m_2x_2 + m_3x_3}{M} = \frac{m_1x_1 + m_2x_2 + m_3x_3}{m_1 + m_2 + m_3}   \normalsize(2)

高校物理の重心の計算式ですね。
単位にcmやgを使っていることを気にする方もおられましょうが、紙飛行機を作るときはこちらの方が便利なので、これでいきます。

また、力としての重量Wを出すときには、重力加速度をかける必要があるのですが、今回は重心位置を求めるだけなので省略しています。

Jw-cadで重心と重量を調べる

機首の先端を基点とし、そこから各部品の重心位置までの距離と面積を調べていきます。面積図心を求める外部変形の使い方については、前回の記事を参考にしてください。

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この重心位置xと面積sを記録します。

単位面積あたりの質量

m1の質量は次の式で計算します。

m_1 = s_1×0.021   (3)

s1はパーツ1の面積[cm^2]、0.021は単位面積当たりの質量[g/cm^2]です。

面積に単位面積あたりの質量をかけて、各部品の質量mを出しています。自分が使用しているケント紙は、210g/m²なので、1cm²あたり0.021gです。

接着材の質量も考慮しなければならないので、自分の場合はセメダインを塗る面積に、1cm²あたり0.004gかけて計算します。これらの値は、ケント紙の種類やセメダインの塗り方によって変化するので、各人で決めてみてください。

これらの値を(2)式に代入して計算します。
計算結果はスプレッドシートにまとめてあります↓

AKDsign - Rei2 - Google スプレッドシート

3つの紙飛行機

今回は重心位置を主翼空力平均翼弦長(MAC)の前から90,95,100%の位置に設定し、3種類の紙飛行機を作りました。といっても、機首部分につけるオモリを調整して重心位置を変えているだけなのですが。

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↑それぞれの機首のオモリ

重心が機首に近いMAC90%のものは機首のオモリを大きくし、逆に重心が尾翼に近いMAC100%は機首を削っています。少しずつ形を調整し、目標値に近づける地道な作業です。

組み立てるとこんな感じになります↓

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計算値と実測値の比較

紙飛行機を組立て、計算値と実際に測定した値との差を比較してみます。

重さ

重さを0.01gまで測定できるはかりを使用して測定しました。

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↑重量測定の様子

設定重心 MAC90% MAC95% MAC100%
計算質量[g] 5.74 5.58 5.46
実測質量[g] 5.70 5.61 5.52

誤差は最大で±0.06gとなりました。はかりの精度や組み立ての出来等により、どうしてもバラつきが出てしまいます。まあ、まずまずの結果ではないでしょうか。

重心位置

重心位置の測定は、ピンセットで主翼を支え、傾かずにバランスが取れる位置を探して行いました。また、MAC100%のものは、ピンセットで支えることが出来なかったため、針で支えています。
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目標重心位置は、図のように縦線を引いて目印にしています。
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↑MAC90%の重心

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↑MAC95%の重心

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↑MAC100%の重心

雑な測定方法ですが、ほぼ目標とする重心位置になっているように見えますね。

おまけ

Rei2の設計データとJw-cadのデータを載せておきます。自由に使ってください。

Jw-cadで図形の重心と重さを調べる

紙飛行機のすべての部品の重心・重さを調べることができれば、組立後の正確な重心・重さを計算できます。こうすると設計の曖昧な部分が減り、組立時の重心調整などの作業が必要無くなります。今回はJw-cadを使用し、図形の重心と重さを調べてみます。

外部変形をインストール

Jw-cadの外部変形(拡張機能外部変形ユーティリティ集 for 土木構造をインストールし、面積・図心を求めます。僕の環境ではJw-cadをCドライブ直下にインストールしているので、それを前提に説明します。

1. ダウンロード

をダウンロードします。

2. KOUZOU02.LZHを解凍し、jwwフォルダの直下に置く

3. C:\jww\KOUZOU02の面積図心.BATをメモ帳で開き、下記のように書き換える

@REM 面積・図心計算 *
@echo off
REM #jww
REM #cd
REM #h1
REM #hc事前に必ず重複線の整理等を行って下さい
REM #hc結合した線分の面積を計算します
REM #1記入位置 マウス指示 (L)free(R)Read
REM #c図心計算(する:1 しない:パス):/_/CENT
ren jwc_temp.txt dummy
jgawk -f 面積図心.awk %1 dummy > jwc_temp.txt
del dummy

4. C:\jww\KOUZOU02の面積図心.AWKをメモ帳で開き、const = 1と書き換える
これで単位をメートルからミリメートルにしています。

5. gawkm115.zipを解凍し、フォルダ内のgawk.exejgawk.exeとリネームする

6. jgawk.exeをC:\jww\KOUZOU02にコピーする。

以上でインストール完了です。

外部変形の使い方

1. Jw-cadを開き、適当な図形を描く
このとき、図形の頂点と頂点は右クリックできっちり閉じましょう。

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↑適当な図形


2. 外変から面積図心.BATを開き、図形を選択

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↑図形を選択した状態


3. 選択確定を押し、記入位置を決める
図心計算は1と入力し、Enterを押します。

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↑図心と面積が入力された状態

単位がm²となっていますが、実際にはmm²の値です。

これで、図形の図心と面積を求めることができました。

重さを計算する

紙に印刷したときの図形の重さを面積から計算してみましょう。
僕が使用しているケント紙は、210g/m²なので、1mm²あたり0.000210gの重さです。

図形の面積は1138.327mm²なので、0.00021gをかけると、

1138.327 × 0.00021 ≒ 0.239 [g]

となります。

紙飛行機を設計するときは、すべての部品で計算するのですが、それはまた別の機会に。

追記

DraftSightでも同様のことができます。

plane.hatenablog.com

Jw-cadで紙飛行機をデザインするメリット

紙飛行機をデザインするとき、みなさんはどうしてますか?

ケント紙に直接書き込み、トレーシングペーパーで写しとる二宮康明氏のような人もいるでしょうし、CAD(図面を作図するソフト)を使う人もいるでしょう。

手書きは自由な線が引けるので、カッコイイ紙飛行機を作るのには良いのですが、それ以上にCAD、それもJw-cadを使うことには多くのメリットがあります。

Jw-cadを使うメリット

  • 無料
  • 複製できる
  • 重心・重量の計算ができる
  • 曲線が描ける

大学や会社で使われているCADは何万円、ヘタしたら何十万もします。紙飛行機をちょっと作ってみようというときに、いきなりそんなものは手が出ません。無料ということは、大きなメリットです。

また、手描きからJw-cadに変えたとき、最も感動したのは複製ができるということでした。プリンターとケント紙とパソコンがあれば、いくらでも同じものが作れるのです。ちょっとした紙飛行機工場といった感覚です。さらにデータは、ネット上に公開することで、誰かに作ってもらえるかもしれません。

Jw-cadは外部変形(拡張機能)が比較的充実しているので、重心・重量の計算も可能です。Jw-cadは操作方法が独特で慣れるまで大変なのですが、この外部変形のために使う価値はあります。

曲線を描く機能はどのCADソフトにもあるので、メリットというほどでもないですが、ベジェ曲線やスプライン曲線という機能を使うことで、マウスでも滑らかな曲線を描けます。

以上のような理由から自分はJw-cadを使っています。(もっと良いソフトとかあったら教えて下さい)
今後は自分の設計方法などを載せていこうと思います。

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↑ちなみに自分はこんな感じで描いてます

追記

DraftSightでも図心と面積計算ができるようですね…。DraftSightAutoCadと操作感が似ていますし(ショートカットコマンドがほぼ同じ)、機械系技術者を目指す高校生、大学生はDraftSightの方が良いかもしれない。

垂直上昇機 「Rei1.1」の制作動画

自作紙飛行機、Rei1.1の制作動画を紹介します。

下記から図面をダウンロードすることが出来ます。

PDFファイルは、縮尺を100%で印刷して下さい。jwwファイルは、JW-CADで開き、編集することが出来ます。jwwで印刷するときは、印刷時に印刷範囲を指定して下さい。
紙はセ-KP29を推奨しますが、平方メートルあたり210gのケント紙であれば他のものでも構いません。

他に必要な物は紙飛行機作りに必要なものという記事で紹介しています。

飛ぶかどうかは、まったく保証できませんが、ゴムカタパルトを使用し垂直上昇させると滞空時間は最大で23秒ほどになりました。

紙飛行機作りに必要なもの

Amazon.co.jp: 二宮康明の紙飛行機集や自作の紙飛行機を作るときに必要な道具について紹介します。

カッターナイフ

ケント紙からパーツを切り離すときは、小さなモノのほうが使いやすいです。

OLFA 細工カッター 141B

OLFA 細工カッター 141B

ハサミ

曲線的な部分の切り離しをするとき、あると便利。

インクの出なくなったボールペン

のりしろの折り目などをボールペンと定規を使って軽くなぞると折りやすくなります。

定規

カッターで真っ直ぐ切るときや、のりしろを擦って平らにするときに使います。

カッターマット

A4サイズのものが使いやすいです。

OLFA カッターマット A4 134B

OLFA カッターマット A4 134B

セメダインC

二宮康明氏は接着剤としてセメダインCを推奨しているので、自分もこれを使用しています。

セメダイン 接着剤C CA-113

セメダイン 接着剤C CA-113

ケント紙

自作の紙飛行機を作るときに必要です。「高性能紙飛行機: その設計・製作・飛行技術のすべて」で二宮氏は「私は紙飛行機用として通常200~210kg/m~2・1000枚程度のケント紙を使用している」(p31)と書かれており、自分はコクヨのセ-KP29を使用しています。

これは210g/m^2となっており、平方メートルあたりの重さは、二宮氏の使用していものと一致します。